江戸時代は信仰の旅が盛んで各地の寺社は年間を通して参詣客が絶えませんでした。 我々が描く封建的なイメージと違って、当時の関所は 軍事的には厳しいものでありましたが、庶民の信仰の旅については 手形を発行するのがお寺と言う事もあり、とても緩やかなものだったようです。
 とくに伊勢神宮(お伊勢さん)には多い時で(文政12年)500万人の人々が参宮したと言います。・・・ 伊勢に行きたい伊勢路が見たい、たとえ一生に一度でも・・・ と謡われた伊勢参り(本参り) は江戸時代に生きる庶民の夢でした。 ・・・時には、伊勢神宮のお札が空から降った等の噂を切っ掛けとして 熱狂的に踊り歩き伊勢を目指す群衆の姿(おかげ参り)が50年周期で発生し ました。・・・親や主人に黙って勝手に抜け出し参拝する女子供の姿も(ぬけ参り)後を絶たなかったといいます。

広重が東海道五十三次絵で誘い、十返舎一九は東海道中膝栗毛で弥次さん喜多さんを伊勢参りに行かせます。・・・・ おかげでするりとさ♪ぬけたとさ♪ ・・・この街道には庶民の解放歌が今でも聞こえてきます。

旅人:浮浪雲